双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

手持ち無沙汰

|モノ|


少し前の出先で、瀟洒な雑貨店へ立ち寄った折、
香りのついたろうそくを二つ、買い求めた。
クチナシのと、ユーカリとハッカのと。
店に足を踏みいれると、香りはふんわりと満ち、
するすると引き寄せられるよにして、辿り着いた
ろうそくの棚の前に、暫し佇んで居たのだった。
冬支度の整った部屋で、クチナシに火を灯す。
あたたかな橙色のゆらぎは、仄かに香った。
夜長の手元に毛糸玉の無いのが、何とも寂しく、
早く届かぬものかと、洗濯物を畳みながら
首の後ろの辺りに、そっと掌をやる。
畳み終えたのを抽斗に仕舞うと、明日のための
着替えを見繕って、寝台の傍らに重ねた。
茶の間から、寝室へ。クチナシがうっすら漂う。

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