双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

坂の下の美容室

|散策|


先週の月曜日、電車小僧を連れての隣町散策の折。
一度も通ったことの無い路地散策で、実に素敵な
発見が在った。大通りから一本入っただけの通りは
静かで長閑で散策には丁度良い。やがて道は緩やかに
坂道を上り、いつの間にか住宅街へ差掛かると、
すぐに下り坂が現れる。小さな高台。坂を下り終えるや、
目の前に、あんまり素敵な佇まいの店が現れたもので、
思わずはっとして、足が止まった。坂の下の角場に建つ
その店は、喫茶店か何かだろか…。通りに面した
窓辺には、植物などが程好く飾られて居り、
室内に灯った仄暗い光で、うっすら琥珀色に見える。
つい好奇心から中を覗くと、どうやら美容室の様だ。
幾ら素敵だからとは云え、あんまり近寄ってまじまじとは
見られぬから、ちいと離れたところから覗うに留めたが、
布張りの椅子だの鏡だのと云った店内の調度品も、
実に趣味が宜しく、落ち着いた中にも控え目にロマンティック
漂う按配で、何処と無く、フジコさんの世田谷のお宅や、
大島弓子作品の雰囲気を思わせる。琥珀色した美容室。
随分古くから在るのだろか。そして今も営業して居るのだろか。
美容室は決まった所に通う質だけれど、あれこれと想いが
頭を駆け巡り、一度かかってみたいなぁ…などと、
静かに胸が高鳴る。好奇心の収まらぬままその場を離れると、
そこは丁度市民会館の裏手。すぐ目の前に、見覚えの在る
大きなお屋敷の敷地をぐるりと囲う、黒い板塀が見えてきた。
思いがけない、素敵な出遭い。散策は愉し。

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