双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

山つつじとコロッケパン

|旅|


月曜日の朝。随分と早くに目が覚めたものだから、
ほんの思い付きで、ひょいと出掛けることにした。
春の18きっぷの、恐らく最後の使い道。
通勤時間帯の下り電車に乗り込んで、会津若松
無計画のぶらり旅も、それはそれ。また愉しいもの。
常磐線から磐越東線磐越西線を乗り継いで。
およそ二十年ぶりに乗った、磐越東線の車窓は長閑。
微かな記憶にぶら下がったまま、夢であったのか、
或いは実際に見たのか、今となってはすっかりおぼろと
なって居た、渓流沿いの緩やかなカーブの景色。
小川郷と江田の間に、ちゃんと在ったのが嬉しかった。
途中、山つつじ観賞のため、列車が徐行を始めると、
春の眠気がとろとろ漂う、ぽっかり空いた午前中の車内も、
静かながらにざわめいて、皆が窓際に集まって来る。
ただ電車に乗っかって、若松の街まで出掛けて、
ぶらぶらして、珈琲を飲んで一服して、またぶらり。
そこそこの遠出なのにも拘らず、ちょっとそこいらまで
の延長、と云った程の心持ちで、殆ど手ぶらの散歩気分
であるのが、何だか可笑しく思えてくる。
そう云えば、数年前に未だ元気だった頃の祖母らと
一緒に来たときは、季節はも少し後、丁度五月の連休前
辺りだっただろか。あのときも確か前日辺りに、例の如く、
父の急の思い付きで、それじゃ行こうか、と決まったのでは
なかったかな。この街に来るときは、そんな風のが多い。
市庁舎の近くの和菓子屋の店先に、丸こくておいしそな、
懐かしい佇まいの惣菜パンが売られて居たので、コロッケのと
ジャムバターの、それと小さな甘食も買い求めた。
間も無しに空が曇ってくる。さてと、そろそろ帰ろか。
駅まで戻る途中に、古い眼鏡屋とせともの屋を見付けた。
再び電車に乗っかって、居眠りしながら来た道戻る。

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