双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

Mini Cine Tupy

|映画|


ブラジルの短編ドキュメンタリ映画 『ホセさんの映画館』 を観る。たった十二分足らずの小さな小さな映画は、心優しきホセ叔父さんが手作りした、小さな小さな映画館のお話。子供の頃から、映画と映画館が大好きだったホセさんは、好きが高じて、自宅の一角のガレージの中に映画館をこしらえてしまった。ホセさんは云う。
「映画は魔法だ。映像の存在そのものに感動する。」
ホセさんの生業は廃品回収業。それを 「ゴミ拾い」 と呼ぶ人も居るけれど、僕が集めるのは、ゴミでは無くてリサイクルできる物で、ゴミとは使えない物のこと。物を大切にすることで、僕は夢を実現できたと、叔父さんは今日も真っ赤なリヤカーを引く。
座席の椅子や、映写機、古いポスター、リール等など。小さな映画館に必要な物は全て、ホセさんと彼の家族が見付けてきた廃品や、貰い物ばかり。リールが足りなければ、要らないレコードを使って手作りする。
ホセさんの映画館は週に一度だけ開かれる。入場料は無料。おまけに、奥さんお手製のポップコーンまでが無料で振舞われる。カタカタと映写機が回り、古い白黒の映画が映し出されると、思い思い夢中になって観入る子供たち。近所の人びとはホセさんに、少しでもお金を取るべきだ、と忠告するのだけれど、そうすると、お金を払えない子供たちが出て来てしまうのが悲しくて、ホセさんは子供たちに喜んで貰いたい一心から、全てを自らの手で、無料で行って居るのだ。
ホセさんの映画の原点は、幼い頃に通った地元の映画館 「Cine Tupy」 での想い出。ノスタルジアに溢れた映画の記憶を形にした、自らの映画館の名前も 「Mini Cine Tupy」。勿論、ショッピングセンターに併設する、今様の映画館との違いも知って居るが、ホセさんは恐らくそれを愛さない。
最後に、まるで映画の科白のよな、ホセ叔父さんの素敵な言葉を残そう…。


朝ベッドの上で、壁の穴から差し込む
細い光線に気づくときがある。
人間は自然の摂理で動いてる。
映写機の発明も偶然じゃない。
だから神様も、映画を作る仲間だと思うんだ。

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