双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

Finding Nighthawks

|旅| |回想|


人っ気の無い、夜の店内で一人
珈琲を淹れて飲む。
外に車の往来は、殆ど無く、
そうか。もう、月末なのだっけ
と、独りごちる…。



と或る街。終夜営業のコーヒーハウス。
夜遊びに惚け疲れた若者たちや、
仕事帰りと思しき看護婦、書きものに
没頭する青年など、深夜の古びた
ボックス席に、ぽつりぽつりと点在する
人々。私は其処に座り、ただぼんやりと
数日前にエレベータの中で見掛けた、
切ない出来事を思い出す。
降り際、手動の内扉に手をかけながら
老人は小さく云った。
「良い一日を。」
「有難う。あなたにも、良い一日を…」
夜遊び帰りの若者の、大きな笑い声で
ふと、我に帰る。丁度、ホッパーの
一枚の絵が、頭に浮かんだ。
私は、この場所の、この時間を切り取る。
一枚の絵の中に、虚ろで安らかな
この倦怠は、漂うだろか。
今頃、宿のエレベータは、昼間の老人に代わって、
夜番の大柄な青年が、動かして居ることだろう。
酔っ払いの奇声が、しんと冴えた
夜更けの通りに響いては、消えてゆく。
足早に歩く人々を時折、眺めつらしながら
皿の上の、ドーナツをかじる。
愛想無いウェイトレスが、減った分だけ
黙って注ぎ足してゆくので、カップの中の
珈琲はちっとも減らない。
私は、紙ナフキンで飛行機を折る。
頼りなく、ぺらぺらの紙飛行機は、
何処へも飛ばず、
目の前にぱさりと落ちた。


旅。記憶。あるいは、断片。




|音|

Every Other Day at a TimeThe Art of NavigationGirlfriendTomorrow The Green GrassOvercome By Happiness


在りし日、音の回顧録

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