双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

秋と冬の間をさまよう草臥れた革靴

|旅| |回想|


ここ数日で、随分と秋らしい肌触りに
なってきたのと同時に、鉛色の寒空の季節が
次第に、近づいて来て居ることを知る。
首もとに巻くマフラーは、深緑と白の
縞模様のが良いな。ツイードキャスケット


タートルネックのセーターの上に、
茶色いコートを羽織ったら、ポケットに
小銭をそのまま入れて、手ぶらで出掛けよう。
ソフトクリームを買い、公園を散歩しようか。
公園の中程まで歩くと、大きな木の向こう、
大学に在る塔が、上半分だけ見える。
学生風情の青年が、やあと挨拶する。
マッキントッシュミュージアムへは行った?」
「うん。もう二回行ったよ」
そうだ。今日はこのまま、公園を抜けて
交通博物館へ行ってみようかな…。
中へ入ってマフラーをほどいたら、
首もとが、少しだけすうっとする。
「君は昨日、ケルビングローブの博物館で
みつばちの巣箱の所に、ずっと居たね?」
声を掛けられて振り返ると、昨日博物館で
見廻りの警備をして居た男性が、今日は
ここに居た。何だか可笑しくなって、
二人して同時に笑い出す。他には誰も居ない
みたいだ。ここは、静かで暖かくて良い。
昔のバスやら、タクシーやらを見て廻るうち、
何処か別の時代へやって来てしまったよな、
軽い錯覚が郷愁と共に、ふわり押し寄せる。
小学生たちが数人、賑やかに入って来た。
売店にて、絵葉書とバッジを買い求めて
外へ出ると、空はもうすっかり夕暮れて
皆が其々の家路を急いで居た。


|音|

今頃の季節になると、いつも思い出す
或る旅の記憶。断片。*1
ここに在るのは、そんな火曜日に
聴いて居たかった音。

Five Leaves LeftOne YearGive Me Take YouFrom Gardens Where We Feel SecureViewfinder

*1:時に記憶は交錯する。私のこの記憶もまた、公園で過ごした一日と、博物館へ出掛けた一日は、恐らく同じ日では無い筈だ。なのにこうして、後から思い出す時には、一緒になって浮かんでくる。不思議だな。

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