双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

頬杖ついて日曜日退屈は指先へと続く

|回想|


思えば幼い時分、私はおかしな子だった。
当然、当時の私に、その自覚は無い。
本が好きで、休み時間にはいつも
図書室や、学級文庫から本を持ち出しては、
机に顎をつけて、突っ伏しながら黙々と読み耽った。
外で遊ぶことも、勿論在ったけれど、
本を読むのに熱中していると、
外に誘われても「今日は止めとくよ」
と、教室に居ることを選んだ。
作文も好きで、もっと作文の授業が在ったなら、
どんなに楽しいかしら…。
と、いつも思って居たりもした。
さぞかし内向的な子供だったか、と云うと
全くそうではなくて、どちらかと云えば
活発な子供だったよに思う。
友達もわりと沢山居て、
時には、男の子たちと野山を駆けずり回って、
秘密基地なんぞで、日が暮れてもなお、
棒切れを振り回したりもした。確かにまあ、
極度の空想(妄想)好きではあったけれど。
四年生の頃。担任の先生は教師になりたてで、
私のクラスが、初めての受け持ちだったこともあり、
私は、ちょっとした問題児扱いだった。
この子には、何か問題が在るのではないか??
家庭訪問の折、先生は母にこう云ったそうだ。
「ホビちゃん(仮名)は、他の子と
ちょっと違って居るみたいなんです。
外に遊びに誘っても、あまり出てきませんし、
興味の在ることには、ものすごく力を発揮するのですが、
そうでないことには、全く見向きもしないんです。
作文も、他の子たちの作文に比べると
どこか子供らしくないのも、気になりますし、
絵を描かせても、ちょっと変わってて…。
忘れ物が多いのも、気になります。*1
私はホビちゃんに対して、どのように接したら良いのか
悩んでいるところなんです。
ひょっとしたら、私に問題があるのでしょうか…」
大分後になって、その話を母から聞かされて、
私は何だか、先生が気の毒になった反面、
ものすごくおかしかった。
まあ、新米教師にしてみれば
なんと扱いづらい、奇妙な子供だったろう。
数年前、その先生が偶然に
来店してくれたことが在り、その話をしたら
あの時は私も若くて、ホビちゃんのような
ユニークな子供に会ったのが、初めてだったのよ
と、笑って話してくれた。
思えば、私の人生のピークは、
あの頃だったのかも知れないなぁ。
際限なく膨らむ想像力。
言葉が追いつかないくらいに、
後から後から思いついて、まるで
終りなど無いように、思えたものだった。
今現在、私は至って普通の一社会人で、*2
至って普通に仕事をし、
ごくごく、当たり前に暮らして居る。
あの頃の自分に、軽く嫉妬を覚える程だ。
ただ、趣味嗜好の部分だけが、
人よりも、ややおかしな傾向にあるのは、
ひょっとして、あの頃の名残なのかしら。

*1:いちばん豪快な忘れ物は、何を隠そう、ランドセル丸ごと一個(笑)。途中で気付くよ、普通。

*2:そう思って居るのは、もしかして自分だけなのか?いや、そんなことない。いや、多分そう(笑)。

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